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■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは
テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
ウインザーラケットショップ池袋店スタッフの中居が独自の目線で話題の商品を紹介します。
テニスに関する仕事をして30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っているシニアプレーヤーです。
「温故知新 ポリエステルストリングの歴史」
前回、ハイブリッドの歴史にて、1987年にプリンスプロブレンドが発売したのが始まりとご説明しました。
今回は、「ポリエステルの歴史」をやっていきたいと思います。
ポリエステルは歴史も古く、耐久性を上げるために開発されたものです。
では、早速紐解いていきましょう。
1997年全仏オープンにて、無名のブラジル人プレーヤー「グスタボ・クエルテン」が彗星のごとく現れ、優勝しました。
その時、話題になったのが、彼が張っていたストリング「ルキシロン オリジナル」です。
回り込んでの逆クロスがアウトしそうな軌道から急激に落ち、ベースラインギリギリに入った後、高くバウンドするので対戦相手は防戦一方になってしまうのでした。
このショットは「ルキシロン ショット」と呼ばれるようになりました。
この当時日本では、ポリエステルストリングの認知度は低く、クエルテンの優勝がきっかけとなり注目が集まるようになりました。
ルキシロンは、1984年に「オーキット」というポリエステルを発売したのが第一号ですが、 ほとんど売れず、1991年に発売した「オリジナル」、1994年に発売した「アルパワー」からヨーロッパでは売れ始め、クエルテンの大活躍から日本にもポリエステルの波がやってきたのです。
その後、1995年キルシュバームの「スーパースマッシュ」、1998年バボラ初のポリエステル「ポリビート」など続々とデビューをしました。
ポリエステルの始まりは1984年からだと思っていたのですが、ポリスターというブランドが1981年創業で、社名からもポリエステルを作っているメーカーということがわかります。 「エナジー」「ターボ」と言えば聞いたことがある方もいるかもしれません。
電線を巻くコイルみたいなモノに、400mの樽巻きという2倍のロールガットを発売しています。
思っていた以上にポリエステルの歴史は古くからあったのですね。
日本に根付くことが遅かったのには、コートサーフェスの事情があったのかもしれません。
ヨーロッパや南米では赤土のアンツーカーが多く、ヘビースピンをきかせたストロークのラリーが長くなり、ガットが切れやすくなります。 ポリエステルは耐久性に優れていることはもちろんのこと、スピンのかかりが良く、 アンツーカーを主戦場とする選手にはとても相性の良いストリングだったのです。
しかし、マイナス要因として、 「手肘への負担が大きい」 「テンション維持が悪い」 「軽く打っても飛ばない」等、 日本人には受けがあまり悪くなく、 練習量の多い一部の学生以外には敬遠されがちな状況でした。
その後、2005年にスナップバックでスピンがかかることが解明されたり、 2011年にITFがスピンのかかり方に関して研究発表し、ポリエステルのスピン量はナイロンより20%、ナチュラルより11%多いことを公表しました。
また、2017年全米オープン出場者男女(128ドロー)のポリエステル使用率は100%でした。(ハイブリッドを含む)
このように、ポリエステルの普及率も徐々に向上し、現在日本では45%までになっています。 (世界では60%の普及率で、韓国に至っては90%になっています。)
今後、ポリエステルはさらにどのような進化をしていくのでしょうか。
ラケットの進化は、さらにパワーが増していくことは間違いありません。
スピン量を増やして距離をコントロールしていくことを考えれば、ポリエステルの需要が増えるのは間違いないでしょう。
特に、選手を目指すジュニアは、ナイロンの卒業が早くなるのではないでしょうか。
実際にポリエステルを使用している方達の声では、
「ナイロンよりポリエステルの方が食いつきが良い」「ナイロンより反発が良い」等、
今まで語られてきたことの逆の評価を耳にする機会が増えてきました。
このような評価は、「インパクトの当たり方の違い」によるものです。
真っ直ぐに当たった時と斜めの角度から当たった時ではストリングの挙動に違いがあります。 真っ直ぐに当たった時は、ストリングは弓なりに「く」の字に凹みます。
ラケットの角度が伏せ気味に斜めに当たった時は、「L」に近い凹み方をして、インパクトの場所、縦糸4、5本のストリングが横にスライドします。 スライドした縦糸は、素早く元の位置に戻ります。これがスナップバックで、食いつきを良くし、スピンのかかりを助け、反発を高めます。
ポリエステルを使用して、「食いつきが良い」・「反発が良い」と感じるのは、 スイングスピードが速く、斜め45%~60%方向にスイングする方かと思います。
今までポリエステルに対してネガティブな印象を持っていた方も、食わず嫌いにならずに一度ポリエステルを試してみてください。
力が無いとないと感じている方は、1.20mm以下の細ゲージを40ポンド以下で張ってみることをおすすめします。 スナップバックの動きを感じてポリエステル本来の良さを感じやすいかと思います。
もしそれでも硬いと感じるようでしたら、次回はハイブリッドにすることも視野に検討してみてはいかがでしょうか。
まずは、柔らかめの丸ポリからスタートしてみましょう。