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GEEK通信「温故知新 トアルソン編」
2024/01/28

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■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは
テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
ウインザー
ラケットショップ池袋店スタッフの中居が独自の目線で話題の商品を紹介します。 
テニスに関する仕事をして30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っているシニアプレ
ーヤーです。
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「温故知新 トアルソン」
1956年創業で、長年、東亜ストリングが会社名で、トアルソンはブランド名でしたが、2017年にトアルソンが会社名になりました。
東亜ストリング時代からラケットは発売されており、フォーティラブシリーズは30年以上続いている名品です。
1990年頃、当時の営業担当者はエネルギッシュな人で、トアルソンのラケットを売り込むために、あの手この手を使ってこられました。
私の休みの日に、家の電話が鳴りました。

中居「今日は休みだよ」
担当者「新しいラケットを試打してもらいたいのですが」
中居「家でゆっくりしたいな」
担当者「今家の前にいるのですが」

担当者はなんと試打ラケットを抱えて、家の前に立っていました。
テニスコートも予約しているらしく、逃げられない状況でした。
フォーティラブプロを試打をして、良いラケットだったのですが、あまりにもプリンスのグラファイトに似ていて店頭で扱うのは保留となりました。
トアルソンと言えば、やはりストリングのメーカーです。
アイテム数の多さは業界No.1で、ポリエステルの無い頃から常に30アイテム以上を展開していました。
1980年代に大ヒットしたTOAゴールドは現在も発売されています。
また大物選手とも契約しており、1993年にはアンドレ・アガシ、1995年にはシュテフィ・グラフがトアルソンのストリングを使用しています。
アガシは縦にケブラー、横にシンセティックのハイブリッドを使用していました。(ラケットはドネープロワン。)
余談ですが、ヘッドのラジカルOSの頃は、縦ケブラーに横をナチュラルに変えていたのですが、ストリングパターンが18×21と細かい上にオーバーサイズでしたので、今のように一つのストリングを半分にして張り上げることができず、縦1張り、横1張りが必要でした。
それが理由かはわかりませんが、縦は16本をケブラーで張り、横はナチュラルを21本張り、縦の残り2本をナチュラルで張る変則張りでした。
グラフはトアルソンのプロナチュラルを使用しており、この頃はナチュラルを張る選手がまだまだ多い時代でした。
その後この二人が結婚することになるので、もしかするとトアルソンがキューピッドだったかもしれませんね。
選手とストリングの契約で忘れてはならないのが、アルゼンチンのガストン・ガウディオと同じアルゼンチンのギレルモ・コリアです。
2004年全仏オープンの決勝で彼らは対戦しました。
テニスでよくある劣勢からの大逆転のナンバー1の試合でした。
ジュニアの頃から将来を約束されていた第3シードのギレルモ・コリアとノーシードから勝ち上がってきたガストン・ガウディオ、戦う前から勝負は決まっていたような雰囲気の中、6-0、6-3とコリアが圧倒していました。
誰もがコリアの優勝を疑わない第3セット途中、急にコリアにアクシデントが発生しました。
足の痙攣です。
4-6と落としてしまい、次の第4セットでは、ほぼボールを追わず、痙攣の回復を待つ作戦です。
1-6と落としましたが、作戦が功を奏し、動けるようになり、第5セットは競り合いながらもマッチポイントまで来ました。
これでコリアが優勝すれば美談になるはずでした。
ただガウディオも5セットを戦ううちに、どんどん調子が上がっていました。
何本もマッチポイントを跳ね返して、8-6でガウディオが大逆転での優勝を勝ち取ったのです。
この試合を取り損なったコリアは生涯全仏オープンの優勝はありませんでした。
何故ならば翌年からナダルの時代が始まってしまったからでした。
優勝したガウディオは、トアルソンのサイバーブレードツアーサーマックス(サーモプラスティックを使ったポリエステル)を使用していたのですが、なんと翌年にはコリアも同じストリングを使用することになるんです。
どうやらガウディオのボールの威力はストリングの影響も大きかったようで、コリアも気になったようでした。翌年のストリングパッケージはコリアになっていたので、やっとコリアが逆転勝ちというところでしょうか。
トアルソンはアイデア豊富なメーカーで、他にはないラケットを発売しています。
パワースイングラケットは、ウエイトが400gと500gがあり、ゆっくりとボールを打つことで正確なフォームを身につけます。
また、試合前に素振りをすると自分のラケットが軽く感じる効果もあります。
スイートエリアラケットは、フェース面積60平方インチの超スモールラケットで、その名の通り普通のラケットのスイートエリアの部分だけを切り取ったラケットです。
スイートエリアの芯に当たる感覚を身につけることができます。
そのラケットで試合をしてる人と対戦したことがあります。負けたのですが、普通に負けるより、悔しかったことを覚えています。
また、左右非対称のパンドラにはびっくりしました。
赤白のツートンなのですが、赤の面積が46平方インチで白の面積が57平方インチで、赤サイドが12g重たくなっています。
また赤サイドはフレーム厚23mmに対し白サイドは18mmと薄くなっています。
赤サイドを上にして打つとスピンがかかり、白サイドを上にすると、スライスが打ちやすくなる仕組みでした。限定生産200本で、7万円ということもあり、ハマった人だけ買ったようです。
今後のトアルソンに期待することは、どこもやらないことを続けていって欲しいです。
変なことをマジメに開発することをぜひ続けてください。