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【GEEK通信】「しなるラケット、しならないラケットのメリットを考える」
2019/02/13
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■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、
そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
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テニスに関する仕事をして、30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っている
中居が担当いたします。
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「しなるラケット、しならないラケットのメリットを考える」
ラケットの硬い、柔らかい論争は昔からあります。
ある人の見解は、「ブレードは硬く」「プロスタッフ」は柔らかい。
私はまるで正反対です。
ヘッドのプレステージもお客様から「硬いですよね」の声をよく聞きます。
実際はよくしなるラケットです。
実際に「しなる」「しならない」と、打球感で感じる硬さはイコールにはならないようです。
様々な要因はあると思うのですが、どうやら飛ばないラケットは硬く感じることが多いようです。
スイートスポットに当たると、振動も無く気持ちよく飛んでいきます。その時に感じるのが[食いつく]や[柔らかい]という感触です。
スイートスポットを外した場合、振動も大きく飛んでいきません。その時に感じるのが[食いつかない]とか[硬い]という感触です。
芯を外すと途端に飛ばないラケットになってしまうので硬いと錯覚してしまうのです。
飛ばないのは、ラケットのねじれが原因なのです。
フレーム厚の薄いラケットはよくしなりますが、同時にねじれも起きているのです。
実際はしなっているのに、硬いと感じるのはねじれが原因で[飛ばない][振動がくる][面がぶれる]などの影響だと思われます。
芯で捉えることができる上級者や、ブレード・プレステージをマイラケットとして使用している方に聞くと、「柔らかい」という返答がほぼくることから、使いこなせる方には柔らかいと感じ、短時間の試打で芯にしっかり当たらないと硬く感じてしまうという結果になるのだと思います。
フレームが硬くてしならないラケットのメリットとフレームが柔らかくてしなるラケットのメリットを考察していきましょう。
硬さを表す基準としてRA値というものがあります。
RA TESTという計測機器を使いフレームに荷重してRA値を測ります。
RA値70以上は硬くてしならないラケットで、RA値65以下は柔らかくてしなるラケットです。
【プロスタッフRF97:RA値73】
【ブレード98CV:RA値68】
【グラフィンタッチプレステージMP:RA値64】
※GEEK中居調べ
硬くてしならない(RA値70以上)ラケットのメリットは、なんといってもパワーが出ることです。
ボールはインパクトから1000分の4秒で飛び出しますので、ラケットのしなりが頂点になった辺りですでにボールは面から離れてしまいます。
しなり幅が大きければ大きい程、パワーを吸収するようになってしまうのです。
よってフレームが硬くてしならないラケットは、入射角と反射角の差が小さくパワーロスが少なくなります。
柔らかくてしなる(RA値65以下)ラケットのメリットは、コントロールがしやすいことです。
スイングは体の回転、腕の振り、後ろから前への体重移動など様々なファクターがあります。
止まっているラケットにボールを当てる場合は、硬いラケットで良いのですが、スピン・スライスなどの回転やロブ・ドロップショットなどといったスピードを必要としないショットの場合は、しなることで打ちやすくなります。そして浅いボール、深いボールの飛距離のコントロールがしやすくなります。
では、パワーとコントロールは両立しないのでしょうか。
パワーとコントロールの融合をテーマに開発された【ウイルソンのクラッシュ】を試打しながらそのテーマを考えていきましょう。 ウイルソンのラケット「クラッシュ」の開発背景として、
【しなるラケットはねじれが起こり、それによってパワーを失う】という切り口からスタートし、
ねじれないシャフトの開発と、カーボン繊維の編み方で柔らかくなる独自の方法を編み出しました。
結果、RA値53(GEEK中居調べ)というかなり柔らかいラケットが完成しました。 店頭にあるラケットを隅々計測しましたところ、、、最もしなるラケットはプリンスファントム100XRJのRA値61でした。こちらのラケットはフレーム厚が16mmと薄いのでしなって当然なのです。
24mm厚のクラッシュが16mmのファントムよりも柔らかい数値が出たのは驚きました。
さらに店頭ディスプレイで飾っていたウッドラケット ウイルソン クリスエバートを計測するとRA値38でした。
もちろん新品ではないのでへたってしまっていることを差し引いたとしてもかなり低い数字です。
番外編としてウイルソントライアドXP125はRA値47と数字上は柔らかく出ますが、これはトライアド構造のためであり硬いシャフトと硬いフェース面をアイソゾーブというゴムでジョイントしているため、そのゴムの部分が伸縮しているのです。
ラケット全体がしなっているわけではないと思われます。 話を戻しますが、クラッシュを実際に打ってみると打球感はそんなに柔らかくは感じませんでした。
ねじれがないためと反発力があるためにそう感じたのかもしれません。
ストロークを打っている時に感じたのは、
スイートスポットが広く、芯を外してもミスが出ない使いやすいラケットという印象です。
ねじれが少ないことで本来ならミスをしたり、本来なら飛ばないボールがしっかりと深いボールで返るのです。

サービスを打つとまた、イメージが変わりました。
 凄く柔らかく感じるのです。 スピン・スライスはいつもよりキレが増しセカンドサービスでもコースを狙って打っていけます。
ただセンターを狙ったフラットサービスだけ、個人的にスピードが出し辛く感じました。恐らくサービスはストロークに比べ芯で捉える確率は上がるのとフラットですと90度に近い角度で当たるためだと思います。
冒頭に書いた1000分の4秒でボールは飛んでいくことを思い出してください。
「しなりが大きい程、しなりの頂点でボールが飛び出してしまうので威力が出ない。」
これが起こっているのでしょう。 (ただし、私はストロークで芯を外してしまうことが比較的あり、本来なら飛ばないはずのボールがねじれが起きないために十分に威力のあるボールが打てるのです。)
クラッシュ100ツアーはウエイト310gでバランス306mm、クラッシュ100はウエイト295gでバランス310mmです。 通常の設計より15mm程トップライトになっています。これはシャフトから手元にかけてねじれないようにカーボン量を凝縮しているからと思われます。
よって10gくらい軽いラケットのように操作できますので、迷ったらこの点について参考にしてみてください。
いくつものパテントを取っている革命的なラケットを32,000円(税抜き)で発売するウイルソンに脱帽です。