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■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
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テニスに関する仕事をして、30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っている
中居が担当いたします。
------------------------------- *ギーク通信のファンの方からTシャツをプレゼントしていただきました
「アディダスのマルチコート用シューズ徹底検証」
テニスコートはハードコート、オムニコート(砂入り人工芝)、クレーコートに分類されます。
それぞれのサーフェスに合うように、ハード用、オムニクレー用が発売されていますが、一足で済ませたい方向けにオールコート用が発売されています。
ただ、オールコート用がパーフェクトに対応できるかというと、ハードコートにもオムニコートにもやや中途半端な感じになってしまうのです。
ハードコートはシューズの着地で摩擦が大きく、急激にストップしてしまうと、足首、膝などにかなり負担がきてしまいます。
そこでソールパターンを、溝の少ないブロック状や粗めのヘリンボーンを採用しています。
かたや、オムニコートとクレーコートは、表面が砂や土ですので、非常に滑りやすい状態のため、ソールはグリップ力のある柔らかいドットパターンとヘリンボーンを組み合わせたソールを採用します。
オールコート用はどちらかというとハードコートに最適で、オムニコートでは、少し滑りやすいのを我慢して履いているという感じです。
テニスを競技としてやっている方は、ハードコート用とオムニクレーコート用を履き分けるのが一般的です。足元がおぼつかなければ試合に勝つことはできません。
そのようなシューズの世界に、新しい風を吹き込んでくるシューズがアディダスから発売されました。
「ウーバーソニック3 MULTICOURT」です。 *カラー:ランニングホワイト×レジェンドインクF17×ショックイエローF18 F36721 *カラー:マットシルバー×コアブラック×フラッシュレッドS15 F36722
名前にもなっているマルチコートとは、ハードコートもオムニクレーコートも専用シューズのように履けることを意味します。
ということで、早速試履きしてみました。足を通してみると今までにないフィット感で、びっくりしました。
シューズのアッパーに大きく入っているラインやブランドロゴは、足をサポートし、動きをスムーズにする目的で使用されていて、決してデザインではありません。
と、このシューズを履くまでは思っていました。
もはやラインやブランドロゴで補強する時代は終わったようです。
このシューズのアッパーに使用されているダイニーマは、鉄の8倍の強度がありながら、水に浮くほどの軽量の超高強度スーパー繊維なのです。
もはや3本ラインはデザインとなっています。 私ごとで申し訳ありませんが、内反小趾(小指側の骨の痛み)に悩んでいて、シューズのラインやブランドロゴの縫い目が当たるとものすごく痛いのです。
こちらのウーバーソニック3は、縫い目のないメッシュアッパーに足首周りがソックスのような一体構造になっており、無理なく足全体をサポートします。
地下足袋を履いているような感覚に近いフィーリングでありながら、左右の動きに対して足が外に流れないようにしっかりブロックしてくれます。
シューズ内部のかかとの内側に柔らかい素材の膨らみがあり、初めて足を通したときは違和感がありましたが、動き出してみると、足首周りのブーツタイプのフィット感とかかとの膨らみの抑え感が一致してサポーターを履いているような気持ち良さに変わりました。
肝心のソールは、オムニコートでシングルスで試しました。
左右に振られて戻るとき、サービス&ボレーの一歩目の踏み出しは、オムニコート専用と比較してグリップ力はほとんど差はなく、ドロップショットの処理に関しては今履いているオムニコート専用より良かった感じがします。
足とシューズがピッタリフィットしているので、動き出しにロスが生まれることなくスタートを切ることができます。
適度なスライドがあり、急激にストップしてしまう砂のない場所でも怖さはありませんでした。
マルチコート用ソールは、オムニコートではほぼ満点の出来でした。 新大久保の屋上にあるハードコートでも履いてみました。
球足の速いつるっとした硬めのコンクリ系のコートです。
心配していた止まり過ぎはなく、快適にプレーできました。
左右に振られたときの、最後の一歩がスライドしてくれて、適度に止まってくれます。
一歩目の蹴り出しもスムーズで、ネットプレーも安心でした。
ここのコートは硬めのコンクリ系なので、2時間のプレーでも足への衝撃が大きく、膝や太ももに疲労が蓄積されます。
ウーバーソニック3に搭載されているミッドソールのクッション性とかかとの補強として採用された(スプリントフレーム搭載)がかかとの安定性を保ち、膝、太ももの疲労感を軽減してくれます。
ハードコートでも満点の結果でした。 アディダスの担当者に疑問に思っていることをぶつけてみました。
私「なぜオムニコートで滑らない柔らかいソールなのに、ハードコートで止まり過ぎないのですか。」
担当者「マルチコート用のソールに使われているadiwear6というアウトソールが柔らかくて耐久性に優れるゴムなのです。」 私「adiwear6はウーバーソニック2にも使われていたと思うのですが」
担当者「企業秘密なのですが、ゴムの配合率を変えて改良しているのです。」
私「そうだったんですね。ヘリンボーンパターンの山形に尖ったソールはハードコートでは減るのが早いのではありませんか。」
担当者「いい質問ですね。実は今回のソールは柔らかいのに減らない素材の開発に成功したことで、マルチコートが実現したのです。」 私「なぜ減らないのですか。」
担当者「例えば、消しゴムはこすると消しカスが出ますよね。あれは削れてるのではなく、ゴムがちぎれているのです。マルチコートソールは弾力性があってちぎれにくいのです。」
私「納得です。」
ハードもオムニもクレーも一足のシューズで対応できるメリットは大きいです。
どうしても気に入ったシューズと、そうではないシューズが出てきます。
履き込むことで足に馴染んでくることもよくあります。 馴染んだシューズでいつでもできる安心感はメリットです。
また、ハードとオムニどちらも使用する場合や行くまでどっちかわからない。
ハードだと思ったら、オムニだった。
そのような時は、一足ですべて賄えるので完全にメリットしかありません。
今後のアディダスのシューズは、ガッチリバリケードタイプにするか、ソフトフィットのウーバーソニックにするか決めるだけで、ソールに悩むことはなくなりそうです。